契約に基づく親子関係・親の支配により守られている子供
親は子供に対して、自分の理想通りの子育てを行い、そして、自分の望む理想像の大人になって欲しいと期待することも多々あると思います。
親の気持ちからすると、子供に理想や期待を抱くことは当然だと思います。
子供に対して理想や期待を持つことじたい、私は問題ないと考えます。
問題はその理想や期待を押し付けることです。
子供は生き延びる為・親との支配関係の契約を暗黙裡に結ぶ
さて、契約に基づく親子関係とタイトルを付けましたが、趣旨は親が子供に何らかの期待をする、その期待に沿わない行動を子供が取ることは許さない、子供を従わせるために、罵声、怒鳴る、叩く、食事を与えない、世話をしない等、子供の人間としての人権を剥奪する方法を取り、子供を親の期待に沿わせようと強制します。
子供としては、そのような親が怖く、生きるため、身の安全のため、親の期待に沿う行動を取らざるをえません。
子供は自分が生きるためには、親の言うことを聞くしかない。
親からすると、親の期待を満たす、言いなりになるのであれば、子供の面倒をみる。
これが、暗黙の契約。
契約に基づく親子関係です。
契約に基づく親子関係、これは、親の子供に対する恐怖による支配関係です。
親は子供に、親の理想や期待に沿うことを要求、理想や期待に沿う限り育てる(面倒をみる)、しかし、理想や期待に沿わない時は罰を与える、そして、従わせる。
子供の主体性、自発性を奪い、子供の人生は親にコントロールされたものとなります。
子供が親の期待に背いてでも、自分を主張出来る強さがあればいいのですが、力の関係上、多くの子供は親の期待に沿った人生を歩むことになる可能性が高いでしょう。
親の理想を叶えるための子育てにおいては、子供が親に従っていれば、結果として親は子供に満足。
そして、子供は契約上、親に守られ、安定、安全な人生、道を歩むことにつながるかもしれませんが、実は子供にとって安心、安全に暮らすためには、親への防御に一心であり、大切なことを経験しそこないます。
それは、自分で自分のやりたいことをする、自分で自分の人生を決める、自主性、主体性、積極性、決定、責任、これらの経験が出来ない人生となってしまう可能性が高いのです。
もちろん、社会人になってからも人生は続きますので、親子の契約を破棄することは可能です。契約に基づかない親子関係をおくることも可能です。
具体的には1人暮らし、そして、親の期待に沿うために入った企業、組織を辞め、自分が本当に求める人生を具体化できる道を選ぶ。
親の理想、期待との決別です。
しかし、私は考えます。
親のもとを離れ、1人暮らしをすることは出来るでしょう。
しかし、今まで親との契約に基づき、契約に従うことより、安心、安定を維持した人生を送ってきました。
それが、いきなり1人暮らしを始め、さぁ、自分の人生を生きよう、転職、起業も踏まえ、自分の望む人生を送ろう、自由に生きようとなるでしょうか?
自由に生きるためには、自主性、主体性、積極性、コミュニケーション力、意思決定力、責任を取る。
これら一連の行為と能力がなくしては、自己決定に基づき、自由に暮らすことは出来ません。
なぜなら、自由に暮らすとは、決定と責任の連続であり、今までのように親子の契約はなく、親は守ってくれず、全てが自己責任の生活なのです。
今まで、親の契約内において生きた子供が、いきなり、自分のことは自分で責任を取る人生をおくる等、今まで経験してこなかった人生、生活が出来るでしょうか。
契約に基づく親子関係から得られる最大のメリットは、親の理想を満たす契約を守っている限り、親の支配下にいる限り、親より安全、安心は守られていたのです。
しかし、親子間の契約を破棄、1人暮らし、及び自分の人生を歩む一歩を踏み出した瞬間、自身の身、人生の安心、安全を守ってくれるものはなく、はじめて経験することも多々あり、漠然とした不安が先行して、生きることに対して困難を感じられることもあるのではないでしょうか。
さて、心理学では、自分を構築しなおす、「自分で自分を育てる」と言われていますが、悔しいことに、親の期待に沿うことを自分に課された子供、契約に基づく親子関係において生きてきた子供は、成長してから、今まで経験してこなかった生き方の代償を払わざるを得ないのです。
理不尽極まりますが。
(ここまで、1人暮らしと、自分の人生を歩むことをセットとして書いてきましたが、理由は、親の元にいては、自分の人生を歩むことは出来ないと考えたからです。子供が自分で自分の人生を歩もうと動きはじめた時、親と一緒に暮らしていたのでは、必ず、親の干渉という邪魔が入り、自分の人生を歩む阻害要因となるでしょう)。
さて、契約にもとづく親子関係について書いてきましたが、子供が契約を破棄した時の親の心中はどのようなものでしょうか?
親は子供が親の理想を満たさないことに対して、逆上するかもしれません。または、絶縁宣言をするかもしれません。
そして、さらには、親は心を病むかもしれません。
なぜ、契約を破棄された親が心を病むのか、その理由は、親は自分の理想を叶えるため子供に執着していましたが、その執着する対象に背を向けられ、生きる希望がなくなり、また、親の理想を満たすことが、子供にとって最善の人生であると信じていた親は、今後の子供の人生に不安を感じ、その連鎖の感覚で、自分自身が不安でいっぱいになり心を病んでしまうのです。
契約に基づく親子関係と題しましたが、実のところは、親は子供に親自身を依存させていたのかもしれません。